第29回 写真が捉えた南北戦争後の巨大袖の実装―近代アメリカの滑稽なスタイル― (You Tubeアメリカ服飾史講座シリーズ)

第29回 写真が語る近代アメリカの庶民服ー1890年代の民衆の生活文化を垣間見る― 

アメリカ服飾史講座シリーズとは、どのような講座なのでしょうか? 我が国では、アメリカ服飾史の研究者は、たいへん稀少です。また、数多く見られる西洋服飾史の研究においては、上流階級の服飾に関する研究が主流を占めています。それに対して、濱田はアメリカの上流階級のみならず、中産・下層階級の服飾に関する歴史的背景を踏まえた服飾史研究をアメリカ服飾社会史として、38年間に渡って構築してきました。濱田の研究対象には、ネイティブ・アメリカン、およびアフリカン・アメリカンというマイノリティの衣服、およびテキスタイルも含まれています。本講座が、今後の服飾史研究に役立てば幸いです。 アメリカ服飾史講座シリーズ第24回から「写真が語る近代アメリカの民衆の装い」のシリーズを6回に渡ってアップロードしています。シリーズの中のシリーズです。お楽しみ下さい。 本講座をご視聴下さる前に、第23回のイントロダクションをご視聴下さい。
本講座の上位5位のURL
第1回  https://www.youtube.com/watch?v=YAMWnCU7udk

第3回  https://youtu.be/luzabId5am0

第17回 https://www.youtube.com/watch?v=AB5U4x24lII

第6回 https://youtu.be/n6tSJBpBxN8

第2回 https://youtu.be/srVDTus_6C8

#アメリカ服飾史講座シリーズ  #19世紀アメリカのドレスリフォーム運動  #パンツをはいた女性たち #アメリカンルックの誕生 #アメリカ史に見る職業着  #濱田雅子のアメリカ服飾史 #アメリカ植民地時代の服飾 #アメリカ独立革命期を舞台として   #写真が語る近代アメリカの民衆の装い

全体構成
Ⅰ アメリカの歴史的背景
Ⅱ 1890年代ヨーロッパの服飾
Ⅲ 1890年代アメリカの服飾
Ⅳ 1890年代の写真が語るアメリカの民衆の装い
Ⅴ まとめ

皆さん、こんにちは!皆さんは、アメリカ独立革命や南北戦争については、歴史の授業で習われていることかと思われます。それでは、アメリカの服飾の歴史は、ご存じですか?

言われてみると、「風と共に去りぬ」の衣装の他は、あまり浮かんでこないのではないでしょうか?本講座は、 1890 年代の写真分析がテーマです。特に、注目すべきは女子服の巨大袖の流行です。そこで、本チャンネルでは、サムネイルに見る巨大袖に着目し、巨大袖ごっこと名づけて、ヨーロッパの袖の歴史に照らしながら、アメリカにおける袖の変遷の歴史をたどってみたいと思います。ヨーロッパのエリザベス一世女王の衣裳や日本の鹿鳴館での舞踏会での女性のスタイルとも比較します。珍しい写真を通して、ファッションの滑稽さをお楽しみ下さい。

1890 年代のアメリカでは、男子服のみならず、女子服もコートやケープの外套類やシャツブラウスやスカートなどのアイテムの大量生産が可能となり、デパートが増加し、小売カタログ市場が発展しました。本研究では女子服の袖をフランスのファッション 雑誌“La Mode Illustrée”および”L’art et la mode”掲載のファッション・プレートに観られる袖と比較・考察いたします。

1880 年代に引き続き、郵便小包制度が発展し、モンゴメリー・アンド・ウォード社(1870 年)やシアーズ・アンド・ローバック社(1893 年)は、カタログ・ショッピングに成功し、 地方無料配達制度は、カタログ・ショッピングとタイアップして、1896 年以降に効力を発 揮しました。 1890 年代は、1880 年代に流行したバッスル衣裳から現代衣裳に近いものへと変わっていき、衣服の歴史を語る上で重要な過渡期です。この時代に既製服に対する需要が一般化し始め、女性の衣服に大きな変化をもたらし、衣服の価値観も変わりました。装飾の凝った衣服からよりシンプルな形へ移行していきました。ライフスタイルの変化が確実におこり、 1人がたくさんの衣服とその種類を持つことが経済面からも可能になったのです。
ファッションの発信源としてパリはいまだ強い影響を与えるものではありましたが、腰を細く締める傾向は、アメリカではこの時代においてはあまり見られませんでした。 しかしながら、家庭は依然として生産の場であり、消費の場へと移行してしまったわけ ではありません。大量生産により、安価な既製服が市場に出回っていたのですが、多くの主婦はパター ンとミシンを駆使して、家庭裁縫によって、より最新の衣服を手に入れ、節約して暮らしました。 女性が社会に出て、仕事に従事したり、スポーツを楽しんだり、自転車に乗ったりするようになると、簡素で、機能的な衣服に対する大きな要求が出てきたのです。そこで、 登場したのが、新しいアイテムのシャツブラウスです。このブラウスはあまりフィット しなくてもよかったため、家庭で容易に作ることができ、既製服を買う必要はなかったようです。 セパレートのスカートも家庭で容易に縫うことができ、綿の家庭着や化粧着やマザーハ バード も家庭で、一日で、作ることができたようです。
こうして、19 世紀末のアメリカの主婦 は、一方で節約して、他方で、既製服を買い求める、という合理的な暮らしをしていたのです。 女性用のオーダー・メイドのスーツは紳士服の仕立て師によって作られました。 労働に携わる女性は、写真 247(看護婦)、写真 242(工場の女子労働者)、写真 262(黒 人の看護婦)に見られます。写真 268 には、自転車に乗ろうとする女性が見られます。これらの写真についての J.セヴラ女史の解説は、衣服と労働、衣服とスポーツという視点から、実に明快で、含蓄があります。 本章では、大量生産・大量消費社会に向かう、1890 年代の過渡期の様相が、中流階級か ら下層階級の人々が写った 52 枚の写真に実にリアルに、興味深く映し出されています。やがて訪れる 20 世紀を予測しながら、一枚一枚の貴重な写真から、アメリカ服飾社会史を読み 解いて行くのは、限りなく奥深く、楽しいものです。

参考文献
 Joan Severa: Dressed for the Photographer, Ordinary Americans and Fashion, 1840-1900-, Kent State University Press, Ohio, 1995.
 濱田雅子著『写真が語る近代アメリカの民衆の装い ー Guidebook of Joan Severa: Dressed for the Photographer, Ordinary Americans and Fashion, 1840-1900-』 (株式会社 PUBFUN 2022 年 4 月 15 日)
 濱田雅子著『アメリカ服飾社会史』重版(株式会社 PUBFUN 2022 年)
 『パリ・モードからアメリカン・ルックへ―アメリカ服飾社会史近現代篇―』(株式会社インプレス R&D, 2019年)
 濱田雅子著「『アメリカ服飾社会史』シリーズ誕生への道のり」(アメリカ服飾社会史 研究会会報No.13掲載) https://www.american-mode.comに電子版掲載

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