【バイノーラル録音】多摩ニュータウン通り・鎌倉街道の自転車ナビマーク
小山内裏トンネル北交差点から関戸橋までの10.4kmを実走した。
一部区間では自転車ナビマーク設置以前からあった停車帯的な空間が実質的な自転車レーンとして機能しているが、それ以外は車との混在通行だ。
こうした環境では車が不十分な側方間隔で自転車を追い越すインシデントが(特に自転車の速度が低い時に)発生しやすい。本動画でも松が谷トンネルへの上りや関戸橋へのアプローチでその事象が多数(※)見られる。
(※上り基調となる反対向きの走行や、ロードバイクではなくママチャリでの走行では、追い越される頻度・速度差とも増大するだろう。)
いずれのインシデントも追い越し時に車が同一車線内の右端に寄るのみで、隣の車線へのはみ出しを避けていることから生じている。その際の自転車との側方間隔は0.4〜0.6m程度と思われる(※)。
(※この路線の車線幅は(L型ブロックのエプロン部も含めれば)単路で約3.5m、交差点流入部で約3.25mある。自転車(約0.6m幅)でナビマークの中心線(縁石から約0.8m)に沿って走った場合、自転車の右側に残る車線幅は2.15〜2.4m。車の幅はドアミラーも含めれば軽自動車で約1.8m、小型乗用車で約2.0m、普通乗用車で約2.0〜2.4mある。)
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ところで、道路交通法の次の改正原案には車で自転車を追い越す際の側方間隔の確保と速度差の抑制の義務が盛り込まれ、法令外で示す目安が、間隔は1.0〜1.5m、速度差は5〜10km/hになると報じられている。
この規定を現実に当て嵌めると、本動画のような幹線道路では自転車追い越し時の車線変更ないし車線はみ出しが(軽自動車であっても)必須になり、60km/h制限の道路でも20〜30km/hへの減速が求められることになる。問題はどれだけのドライバーにその技量があり、実行できるかだ。
一定以上の交通量がある状況では、自転車利用者を追い越そうとする後続車のドライバーは、
1. 自分が車線はみ出しのリスクを引き受けて自転車利用者の安全を守るか
2. 自転車利用者の安全を犠牲にして車線はみ出しのリスクを回避するか
のジレンマに陥る。
また、追い越さずに自転車の速度に合わせて追走する場合も、
3. 自分が後続車からの同調圧力(流れの速度で走れ)に耐えて自転車利用者の安全を守るか
4. 前述のジレンマ状況に踏み込むか
のジレンマに陥る。
このように瞬時に複雑な判断を迫られる高ストレス状況下では選択肢2を取るドライバーが多い(ジレンマ状況に陥らないように先読みして早め早めに行動できるドライバーは少ない)というのが、各地を実走しての体感だ。
また、側方間隔を法制化した諸外国の例から分かるように、その違反を取り締まるのは極めて難しく、ドライバーの運転行動を変えさせるほどの介入効果は期待できない。
加えて、幹線道路の車道は元々、低速交通を排除する(瞬時の対処が必要な事象への遭遇頻度を極力抑える)ことで誰でも簡単に車で高速走行できるようにした空間であり、そのためのデザイン要素(緩やかな線形、物理的な中央分離帯など)はドライバーに高速走行を促す非言語メッセージを発している。
この道路デザイン(「速く走れ」)を放置して法律だけ変えると(「遅く走れ」)システムは不協和音を起こし、ドライバーはダブルバインドに困惑する。そして変わらない現実を前に、一般的な自転車利用者は自己防衛のため引き続き歩道を走り、最終的に歩行者に皺寄せが及ぶ。
変革の本丸は交通法改正ではなく道路デザインの見直しなのだ。車道の高速性を維持するなら別途自転車道や副道を確保すべきだし、低速化に舵を切るなら(標識の掛け替えだけでなく)スピードを出せない構造・雰囲気に改める必要がある。