いすゞ 88089
行かない で小さく揺れる肩の動きで彼女が泣いて いるのが伝わって くる私は自分の感情を抑えることができず にそのまま彼女の手を握っ た社会人になって13年が経った1つの 会社に金属して培ってきた大人としての 振る舞い今ではもう慣れたものだが新入 社員が入ってくるたびに過去の自分のこと を思い出しては重ねてしまう自分にも あんな時期があっ た新しい社会という舞台に胸を踊らせて 期待と不安で胸を膨らませた 日々夢を叶えようとするその瞳は希望で 美しく輝いていた けれど私はあの頃の気持ちを思い出せない ほどもう社会に染まりすぎてい た生活のために働いて毎日家と会社の 往復無駄に体力を使いたくないから自分の 胃にそぐわないことも本音を飲み込んで頭 を 下げる対立するだけ時間の無駄遣いだ正義 とは何かを考えるのもめんど くさい昔は自分の意思を貫きたいと常に 思っていた若者だったのにどうしてこんな に妥協が当たり前になってしまったの だろうぼんやりと考え ながら私は新幹線から流れる景色に目を 向けてい た見渡しても田ばかりが広がり景色の ほとんどが 緑色私は今日からこの田舎で単身不妊を することになっ た移動の事例が出たのは半年前この地方 勤務で昇格して成績を上げればまた東京の 本社で以前よりもいい対空が浮きられる 部長のその言葉に私は断ることができずに 地方転勤を決めた もちろん妻のおあには勝手すぎると責め られてい た私の家庭は結婚して10年 目あもフルタイムで働いているので仕事を 辞めて一緒についてくることは現実的では ない正直仕事がなかったとしても彼女が ついてきたかは怪しい ところ結婚生活が長くなってきたせいか 夫婦としての最近の関係は冷え切ってい た真ねりな生活の中ただ離婚するのも面倒 でしていないようなそんな 2人お互い仕事が忙しいことを理由にして 向き合おうともしてい ない最後に一緒にどこかへ出かけたのは もう何年も前の話 だ私が単身不妊をすることで別々に住む ことになった
私たち離婚という選択肢もあったのだが私 から話を切り出すことはし ないプライドの高い彼女は私に対しての 執着はもうないものの自分が振られた立場 で離婚するのが許せないのだと思うでも 離れて暮らせば少しはこの関係に何か変化 が出るかもしれないそんな淡い期待を抱き ながら私は進展地に降り立ったのだった あら 珍しい見かけない顔 ね1日に数本しかないバスに揺られて私は 新居となるアパートに向かったアパートの 前で1人の女性が微笑んでいる春になった ばかりの花壇から小さな花が芽吹くその土 に愛しそうに水をやる彼女はどこかとても 眩しい存在に感じた今日から引っ越してき たん です今日から入居予定の部を刺す私に彼女 ははっとして駆け寄っ たあなたが今日からの入居さんね私が大家 の内村美希です よろしく 身につけていたガーデニング用の手袋を 外し彼女は私に右手を差し出したその手を 握り返し軽く挨拶を済ませると私は部屋に 荷物を 運び込む窓からはサンサと日差しが 入り込み部屋は太陽の香りで包まれてい た私隣の部屋に住んでいるから何かたいつ でも声かけて ください大家の隣の部屋というのが少し 驚いたけれど私は少しだけ安心していた ミキさんは明るくて愛そがいい誰も知ら ないこの土地で気軽に話しかけられそうな 相手がいるのは嬉しいことだこの日から私 は新しい生活をこの町で始めることになっ たそれから1年後夏の気配が近づく長雨の 季節じめじめとした湿気を帯びた空気が それまでの私の人生を変えていった慣れ ない地方転勤で心細かった私に美希さんは 何かと親切にしてくれた美希さんは私より も6歳年下でこのアパートの管理をし ながら毎日を過ごしている時々近くの畑に 出向いては自分用の野菜を栽培している ようでたまにお裾分けに来てくれたりした しかし今まで料理は全くしてこなかった 私自分で作れるものといえば焼きそばや カレーなど簡単なもので精 一杯新鮮な野菜を頂いてもやましてしまう そんな話をなんとなくした時にさんはそれ ならばと自分で作った料理を時々届けて くれるようになっ た彼女の料理の差し入れに私は感動してい たあと住んでいた家でも最近はめっきり 彼女の手料理を口にしなくなっていたから
だ結婚した当初はあも仕事がありながら 頑張って作ってくれてい たいつの間にかお互い仕事ですれ違うこと が多くなり食事もバラバラついには家で 食事することも少なくなり外食ばかりで 独身の頃とあまり変わらない生活に戻って い た新鮮な野菜を生かした優しい味つけの 料理に空腹も心も満たされていくそのうち にもっと仲良くなった 私たちついには彼女が夕飯をを作って待っ ていてくれるようになっていたさすがに 毎日通うことになるので初めは遠慮してい たが結局彼女の行為に甘える形になって しまって いるこっちでの生活になれ始めた私にあ から連絡は1度もない生活環境が変わった 夫を気にかけることすら今の彼女にはない よう だ少しだけ期待していた私は空振りを 食らったような気持ちで落ち込んでいた その隙間を埋めるように温かいミキさんの 食事と人柄に包まれていた 私ミキさんの笑顔を見るたび私は自分の胸 が10年以上忘れていた恋の感覚を 思い出したことに気づいてい たでも手の薬指にはあとペアの指輪が輝い ているそれが視界に入るたび私は浮ついた 自分の心を自生してい たいくら冷め切っているからと言っていい はずがないよな私は既婚者許されるわけが ないん だ自分にそう言い聞かせた後は決まって胸 が痛くなる自分の気持ちを躊躇なく口に 出せたらどんなに楽になれるだろうでも それは自分の勝手な都合彼女は私のことを ただの住人としてしか見ていないかもしれ ない彼女の気持ちも確かめずに暴走する ことはできないそれに伝えたとしてミキ さんがその気持ちに答えてくれる確証は ないミキさんがいなくなってしまえば私は 本当にこの土地で1人になってしまう ぬるま湯のような関係に使った私は自覚し ながらもそこから抜け出せずにいたねお 休みは奥さんのところへ帰らないの しとしとと雨が窓の外を 濡らすとどいしずが青青とした歯や草に 落ちて独特な雨の日の香りを生み出してい たいつものように食事に呼ばれて料理をに する私にみきさんは不に問いかけた彼女 からあについて触れてくることはなぜか 少なかった触れられたとしても大して話す こともないのだ けれど帰ったところで喜ばないだろうし なら別にいいかなって苦笑いを浮かべる私
にミキさんは顔を近づけていっ たもしかして奥さんとく言ってない の直球を投げられて私は思わずむせ返る 連休があるのに妻の元に帰らなければ誰も がそう思うだろう実質うちの夫婦関係は 破綻している手続きが面倒だという事実と 妻のプライドでかじて成り立っているだけ の張りぼて だ彼女はそんな私の反応に小さく呟いた もったいないよね好きな人が生きている だけで幸せなことなの に彼女がぽつりとつぶやいた言葉に私は つい無言になってしまっ たミキさんは3年前に夫に先立たれた 未亡人若くして嫁いだ場所で唯一の家族 だった夫が突然の病で亡くなっ た孤独だったミキさんには帰る場所もない 唯一夫が残してくれたこのアパートと畑で 彼女はたくましく1人で生きてきたの だそんなミキさんに比べたら私たち夫婦の 生き方はわがままの塊りでしかない ね沈黙の中美希さんの細い指先が私の頬に 伸びる 優しく触れた指先はゆっくりと顎へと輪郭 をなぞっていっ た一緒にいるのに寂しい思いをするって どんな 気持ち私の瞳をまっすぐ見つめたまま彼女 は問いかけてき た最愛の夫をなくした彼女の寂しさと互い の関係に甘えているだけの 私たち彼女の寂しさを埋めたいのか自分の 心を埋めたいのか私は自分の本当の気持ち が分からなくなってい たこんな誠意のない気持ちでミキさんの 寂しさを埋めたいなんて言えるわけがない 完全に自分のエゴなだけ だ自分の感情と頭で考える 正論2つがぐちゃぐちゃに混ざり合い具現 化できない 私は黙ったまま彼女の手を握りそのまま テーブルに戻すと静かに席を立った 問いかけたことで私が気を悪くしたと 勘違いしたのかミキさんは慌てて 立ち上がると後をついて くるごめんなさい 私玄関のドアに強くなった音が響く私は彼 に背中を向けたまま自分の心を素直に伝え た甘い手ばかりですみませんでしたこんな 曖昧な関係じゃあなたのことを好きだ なんて言う資格は ないきっとミキさんはこんなどっちつかず な私のことを軽蔑する だろういそのこと嫌われてしまえば私は 彼女への気持ちを諦めざるを得ないにさん
を好きだという気持ちに未練を感じながら 私はぎっと目をつぶっ た次の瞬間背中に温かさを感じ たミキさんが後ろから私の背中に抱きつい ていたの だ行かないで小さく揺れる肩の動きで彼女 が泣いているのが伝わってくる私は自分の 感情を抑えることができず そのまま彼女の手を握っ たあなたのために食事を作るようになって から夫が帰ってきたような気になっ てもうこれ以上1人の寂しさを感じたく ないお願い1人にしない ですがるような彼女の言葉に私は胸が痛ん だ神に背いても私はが好きだ彼女の寂しさ を埋めたいとかそんなのじゃない自分の 感情ももうこれ以上偽りたくなかっ た私はミキさんの方に向き直るとそのまま 強く抱きしめた唇を重ねた2人の間にもう 言葉は必要ないお互いを求めている熱い 視線に嘘はなかっ たを腕に抱いて迎えた朝は幸せなけだるさ に包まれていた目が覚めてもそばにいる ぬくもりと優しい 笑顔腕のしびれを感じながら目覚めたのが いぶりだろう かいつの間にか雨は止んでいて雲の隙間 から光が差し込んでい たミキさんと関係を結んだ私の中には1つ の決心があっ た 家に帰り ますみたくを整えながら私に背中を向けて いたミキさんは黙ったまま頷い た私が妻の元に帰る理由は説明しなくても 理解できたのだろう週末私はミキさんに 宣言した通り数ヶ月ぶりに 帰宅離婚届けを手に私は家のドアを開けた 何勝手に話を進めているの信じられ ない離婚届けを差し出されたことが気に 食わなかったのかあかさに機嫌が悪い あね以前の私だったら言い合いが面倒だと 逃げていたかもしれないけれど今は違う けじめをつけなくちゃいけないんだもう 逃げてる場合じゃ ない深呼吸をしてはリビングの椅子に腰を かけた具体的な話し合いをしようもう一緒 にいなくたっていいってことが浮き彫りに なった だろう黙り込んだあを正面に座らせて私は 薬指の指輪を引き抜いたその行動が私の 本気であることを赤根は悟ったのか突然し らしくなりそのまま離婚届けを記入した 遅すぎたくらいね 私たち明けれたように笑ったああはどこか
少し昔に戻ったように 感じる中途半端な時間を過ごしてきたこと で彼女の人生も無駄に縛っていたのでは ないかと申し訳なくも思っていた表し抜け するほど私たちは簡単に別れることになっ たいつの間にかお互いの顔を見ないまま すれ違い続けた 生活もっと前にこうしてちゃんと向き合え ていれば進む道は変わっていたのかもしれ ないそう考えるのは自分かってなのだろう かこうして私は妻との生活を生産し た離婚届けの提出をあねに託すと私は アパートへと帰って行った 家の前では初めてあった時のようにミキ さんが花に水をあげているお帰りなさい 優しく微笑む彼女に私は小さく返事をして 駆け寄るそれから2年後東京に店が決まっ たタイミングで私はミキさんに プロポーズ彼女は瞳をうるませながら喜ん でいたこの先何があってもは逃げ出さない でいよう彼女と過ごす時間を大切にし ながら私は再び見つけた愛を永遠にする ことを誓っ た最後までごご視聴いただきありがとう ございます
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